2015年7月31日金曜日

お金をかけるなら「ストーリー」のある建物を

騒動も一段落したようなので、新国立競技場について。

英断。

遅すぎるという指摘もあるけど、およそ政治家や役人が取りそうにない手段が取られたんだし、評価するべきだと思う。担当大臣が「国民やアスリートからの意見を積極的に聞く」と言っているのも、本当にその通りかどうかは今後次第だけど、2015年の今の時代としては当然で、すばらしいこと。

白紙撤回前、

「どんなにお金をかけても、ストーリーのない建物は時間が経ったら古くなるだけだよね……」

と、考えていて、あらためて建物の「ストーリー、物語」って何だろうと。
簡単に言えば、建物に付随する歴史や、思想、こころざし、のようなものなんだろうけど。

(フィンランドのテンペリアウキオ教会)

申し訳ないけど、北京で見た(といっても、遠くから眺めただけ)「鳥の巣」は、あまり魅力的ではなかった。
故宮とか、万里の長城とか、他の歴史的建造物は、とても良かったんだけど。



それに比べると、ヘルシンキのテンペリアウキオ教会(一番上の写真)は、客観的には規模も小さく大した見所はないのだけど、精神的に満足できる場所だった。(行ってよかった、という意味)

半地下にあって、氷河時代の岩をくりぬいて作られた教会。
緑はないのに、不思議と地球と調和しているような、いい雰囲気でした。
これは「ストーリー」を感じた、ということだと思う。

結局、お金を費やした公共事業がいけないということではない。
ヨーロッパの観光地はほとんどそれだし。w
イタリアなんて世界中から富を集めた全盛期に、豪華な建物やら何やら造りまくったけど、ぜんぶ観光資源になってるし。ギリシャ人だって祖先に感謝しているでしょう、きっと。

ただ、最近は世界が均質化して、そういう「ストーリー」のある建物が造りづらくなっているような気がする。

数百年前の建物に歴史があるのは当然なので、もっと新しい建物で、「ストーリー」ある/なしについて考えてみると、
(もちろん「ストーリー」を感じるかどうかは人による。自宅だって住んでいる人にとってはストーリーがあるわけで。だから、あくまで主観的なことしか言えない)

ガウディのサグラダ・ファミリア これはもちろんある(笑)。いつでも建築中ということ自体が売りになるってすごい。

シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズ まだ新しすぎるので、古くなってからどうなるか? ただ、私は、すごく「シンガポール」らしい建物だとは思う。だから、それが「ストーリー」なのかもしれない。いかにも華僑の好きそうな、圧倒的な豪華さ。富の象徴。巨大な船は海洋貿易の拠点のシンボルだよね?


東京駅 少なくとも日本人にはある。当然か。私の場合は内田百間の随筆を思い出したりする。

ちなみに、歴史的建造物の場合、「ストーリー」を外国人にも分かるようにアピールしているか、という点も大事だと思う。
知っているか知っていないかで、感じ方はずいぶん違うので。

東京タワー これも、もちろんある。「東京タワーが見える部屋」というだけで、特別なものを感じる人もいるはず。スカイツリーは、まだこれから、かなぁ……。

六本木ヒルズ 丸ビル・新丸ビルなどは申し分なく美しいオフィスビルだけど、際だった「ストーリー」があるかというと、六本木ヒルズのほうが上だと思う。いろんな意味で。
しかも、あのビルは、最初から「ストーリー」を持つように、明確に意図して建てられたと感じる。そうでなければ「ヒルズ族」なんて言葉は生まれなかったはず。不思議な楕円形のフロアや、敷地の複雑さ(結構好き)。あのぬいぐるみたち!



(ヒルズの写真を探したけど、意外と撮ってないもんだな~。見つけたら貼ろう)



新国立競技場も、お金をかけて作るなら、やはりそれなりの「ストーリー」を持たせてほしい、と願わずにはいられない。
合理的な工事費・維持費、スケジュールに間に合うこと、といった厳しいハードルはあるとしても。
それも、バブル時代に戻りたい、というような後ろ向きなものではなく、成熟社会にふさわしい新しい「物語」。

それでこそ、オリンピック後も人々に愛され、外国人観光客も訪れて、満足してくれ、稼働率も高くなるんじゃないかな……。

面白そうな案は色々あるけど、つまりは、「日本らしさ」をどう出すか?
日本の伝統、ということを考えると、やっぱり「自然との調和」は外せない。

自分が安倍さんなら国立競技場はこうするぜ!!!
冒頭の首相の台詞に爆笑したけど、リアルになるとは思わなかった。
というより、政権内部の人もこれ見たんじゃないのかな?!

国産の木材、それも花粉症のもとになる杉材をふんだんに使い、技術の粋をきわめて、「世界最大の木造建築競技場」(ある意味、現代の法隆寺のようなもの)をつくる、という壮大な話。実現性とかいろいろ、いろいろ、あるんだろうけど、これくらいのことができたら本当に誇りが持てるし、一大観光名所になるだろうな……。

▼妹島和世氏案
そもそも最終候補案で第三位に残っていたもので、和の美しさがあると人気らしい。

公開されている画像からはよく分からないのだけど、波打つ屋根が特徴とか。

▼ツヨシ・タネ氏案(例の古墳案)


これを設計したタネさんという方はまだお若く、

「建築とは何か?」を考えた先に見えてきたのが「場所を作る」「人が集まるために場所を作る」
「失われた街の記憶や文化を引き継いで、場所を作る」

という言葉が印象的でした。インタビュー
『東京人』(雑誌)みたい。
確かに、土地にはその場所の記憶があるし、年を取るとそういうものに興味が出てくるんです。

植樹が間に合わない、という声もあったけど、昔、ミッドタウンの庭園ができたばかりの頃や、今年、出来たばかりの二子玉川ライズなど、あんな程度で十分。むしろ、植え途中でもいいのでは? 未来のビジョンが素晴らしければ、みんなビジョンのほうをちゃんと見てくれると思う。
こんな小山があったら、将来、憩いの場になるでしょう……。

私は、近未来の都市は、よく映画などで描かれる、ビルと機械だけの灰色のそれではなく、よほどのことがないかぎり、もっと緑が多いものになると思ってます。
結局、人間はそれを求めるだろうと。


まあ、実際はどうなるか分からないけど、これからも見守っていきます~。

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