2016年9月18日日曜日

【メモ】腸内細菌と免疫

がんの免疫療法が人によって効いたり効かなかったりするのはなぜか、マウスの実験で腸内細菌と免疫機能に関係があるという話。

2016年8月号の日経サイエンスより。

人の体には友好的な細菌群、マイクロバイオームが棲み着いている。その構成は家族でも親子でも一人ずつ異なる。腸内細菌、腸内フローラなどと呼ばれるマイクロバイオームは、免疫機能に関わっているとみられている。

以下、実験の内容より抜粋(上記の号P.64):


・遺伝的に同一なマウスの系統を異なる環境で育て、異なるマイクロバイオームを持たせる。
黒色腫(皮膚がんの一種)の細胞を注射すると、腫瘍の成長速度に差が出た。腫瘍に対する免疫応答が強かったため。

・腫瘍の成長が遅かったマウスの腸内にある細菌Aを移植すると、移植されたマウスも、腫瘍の成長が鈍化した。

・次に、がん免疫療法の一つである「免疫チェックポイント阻害剤」を、腫瘍を移植したマウスに使用した。
腸内マイクロバイオームに細菌Aを持つマウスは、薬によって腫瘍が完全に消失した。
細菌Aを持たないマウスは、薬への反応が部分的にとどまった。
細菌Aを移植されたマウスは、薬が効いて完治した。

・上記とは別の実験の場合、細菌Bを付与すると、免疫チェックポイント阻害剤によって移植した腫瘍が消失した。抗生物質でこの細菌Bを殺すと、薬が効かなくなった。

・人間の治療に生かすには、人間のマイクロバイオームを調べ上げる必要がある。
また、多くのがん患者は抗生物質も投与されている。これが腸内細菌を殺している可能性?

・なお、ヨーグルトを食べても、免疫療法の効果は上がらないと考えられる。
上記の細菌A, Bは、ヨーグルトに含まれる細菌Cと異なっているため。

・また、免疫系は強化しすぎないようにしなければならない。自己免疫疾患を引き起こしてしまうため。

A: ビフィドバクテリウム・ロングム、または、ビフィドバクテリウム・ブレーベ
B: バクテロイデスという別の属の細菌
C: ビフィドバクテリウム・ラクティス、またはビフィドバクテリウム・ビフィドゥムが一般的とのこと



がん免疫療法は、患者の免疫細胞の力を強めることで、腫瘍を探し出して破壊する作用を高める治療法。外科手術と放射線照射、化学療法(抗がん剤投与)という標準的な方法に加えて、がん治療の有力な新手段になると期待されている。

ただし、この号の記事を読んだかぎりでは、まだ課題は多いのかな~という印象。
二人の患者の例が載っていて、確かに免疫療法という新しい治療法がなければ今頃生きてはいなかっただろうけど、並行して外科手術、放射線照射も複数回行っているし、行き当たりばったりというわけではないが、あまり効き目がなかったりして、何種類もの免疫療法を試している。また、がん細胞が消え寛解状態を保っていても、非常に疲れやすくなったなどの治療の影響が残っている。

とはいえ、ほんの五年くらいでここまで来たのだから、そのうち、思ったより早くがん治療の標準的な方法に加えられるかもしれないし、それは是非、期待したいもの。
医療費の問題などは、別にあるにせよ。



それにしても、マイクロバイオーム、いいよね! 熱いトピックス。
人間の体は、人間だけじゃなくて、わきゃわきゃと(←もやしもん的イメージ)いっぱいいる細菌たちと作り上げているっていうところが、素敵。
日経サイエンスは2012年10月号『マイクロバイオーム 細菌に満ちた私』という特集もあります。
「Science誌の選ぶこの10年の10大成果:マイクロバイオーム」

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