六本木ヒルズ「宇宙と芸術展」感想、うつろ舟
ドラえもんと、夏休みの子どもたちでにぎわう六本木ヒルズ。
「宇宙と芸術展」(と、「ジブリの大博覧会」)を見てきましたので、その感想です。
いいお天気! 夏本番ですね!
「うつろ舟どんぶり」も、ちゃんと買ってきましたよ!!
「宇宙と芸術展」 かぐや姫からダ・ヴィンチ、宇宙的なインスタレーションまで
天空、星、宇宙に関わる古今の作品を集めた美術展です。森美術館「宇宙と芸術展」
展示は両界曼荼羅などの古い美術品から始まりますが、最後のほうの現代・未来的宇宙とのギャップが激しくて、良かったなー、と思いました。
「ジブリの大博覧会」よりだいぶ空いていましたが(平日昼間ということもあり観光客の方が多かった印象)、十分見ごたえがあり、楽しめました!
以下、目にとまったものをいくつか。
・星曼荼羅 「星への信仰」は日本ではわりと珍しいと思う。以前、どこかの寺で別のものを見た。
・流星刀 隕鉄を材料に使った日本刀。明治時代に榎本武揚が作らせたもの。作刀にはかなり苦労があったそう。鞘に和歌のようなものが書かれていた。
・レオナルド・ダ・ヴィンチの「アトランティコ手稿」 会場で誰も見てなかったんだけど(笑)確かに茶色い地味な紙切れだけど、「これがダ・ヴィンチさんのインク跡かー」とまじまじと観察してしまった。
あと、天球儀、渾天儀(こんてんぎ)も何種類もありました。
・ピエール・ユイグ動画作品(タイトル忘れました) 虫入り琥珀の中をマイクロカメラで撮影した動画。金属製の木の枝、根っこのようなもの、未知の青い惑星のようなもの、琥珀の中にはいろいろ入っているんだなぁ、と思った。SFちっく。
・「うつろ舟」関連の記事
今回、展覧会に行った動機のひとつ!
江戸時代(1803年)に常陸国に着陸したという未確認物体について書かれた当時の本や、新聞の号外です。これは原本の複製らしいです。撮影OKエリアにありました。感謝感謝。
(以降「宇宙と芸術展」の写真は、クリエイティブ・コモンズ「表示-非営利-改変禁止」となります。)
左上:万寿堂 小笠原越中守知行所着舟(『漂流記集』より) 江戸時代後期(19世紀)
右上:常陸国鹿島郡京舎ヶ濱漂流船のかわら版ずり 原本1844年
下:滝沢興継(1797-1835)(屋代弘賢編)うつろ舟の蛮女(『弘賢随筆』より) 原本1825年
手持ちの本からも引用してみましょう。
享和三年、癸亥(1803)の春、二月廿二日の午(うま)の時刻、(中略)常陸国はらやどりという浜に出来した事である。遥か沖の方に舟のごときものが見えたので、浦人達は舟を数多(あまた)漕ぎ出だしてこれを浜辺に曳きつけ、仔細に見聞に及んだ。
舟の形は香盒(こうごう)のように円く、直径三間余(約5.5メートル)、上部は硝子張りの障子を松脂で塗り固め、底は鉄(くろがね)の板金を段々筋のように張ってある。硝子張ゆえ透き通り内部は隠れなき有様にて、皆が立ち寄って覗いたところ、異様なる風体の夫人がいた。(『江戸奇談会談集』(須永朝彦編訳、ちくま学芸文庫)より。p.166)
舟の形は香盒(こうごう)のように円く、直径三間余(約5.5メートル)、上部は硝子張りの障子を松脂で塗り固め、底は鉄(くろがね)の板金を段々筋のように張ってある。硝子張ゆえ透き通り内部は隠れなき有様にて、皆が立ち寄って覗いたところ、異様なる風体の夫人がいた。(『江戸奇談会談集』(須永朝彦編訳、ちくま学芸文庫)より。p.166)
長いので、続きはこの記事の最後に載せておきます。
これがUFOとか言ってませんよ?
まず、飛んでませんから。
飛行物体じゃないです。
でも、江戸時代の幽霊などがよく登場するニュースの中では、異色を放つ記事。
右側の文字も、なかなかのデザインですよね。
創作だとしても、独創的な作者ではと思います。
「虚舟(うつろぶね)」というネーミングも中二的でいいんですよねー(笑)
物質次元をちょっと超えていたので「うつろ」に見えたのかな、なーんて、ちょっと思ってみたりもするんですけどねー。
このあたりから、急に現代、いや、未来っぽい展示になってきます。
セクシーロボット これが実際に人工知能を載せて動き出したら、やっぱり怖いかもしれない。
トム・サックス ザ・クローラー チケットにもなっている、スペースシャトルの模型。通りがかりの人が「小学生が夏休みの工作でこれ作ったらすごいよな」と言ってましたが(確かに)。
数百年かかる火星の大気の調整とか、いやー、壮大な話。
やっぱり21世紀の人類は、戦争とか核兵器で威嚇とか、してる場合じゃないと思う。明日は8月6日。
そして、いちばん気に入ったというか、衝撃を受けた作品がこれ。
チームラボ 「追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして衝突して咲いていく - Light in Space」
Twitterには支離滅裂な感想をつぶやいてしまいましたがw(何が量子的だ)
真っ黒い部屋の、天井以外の前後・左右・床に、映像が投影されることで、その宇宙のような空間に実際にいるように感じられる作品です。
宇宙的で、同時に古代の日本的でもある音楽と、すさまじい光の映像にびっくりして、四回も見てしまいました。(ごめんなさーい。あまり混んでいなかったので。入れ替え制ではなかったです)
タイミング的に入り口で数分並ぶこともありますが、これは見ないと絶対損!!
VRに興味がある人もぜひ。
雰囲気としては、漫画の『攻殻機動隊2』(士郎正宗)に、日本の神話をモチーフにした電脳空間の描写がありますよね? あれをもっとかっこよくやっている感じです。実際、これで映画を作ったら……なんて想像してしまいます。
長時間だと酔わないように気を付ける必要があるでしょうが、すごいものになりそう。
ネリ・オックスマン ズハル:土星を彷徨う人
感想は、「宇宙人が目の前に現れたみたい」。ちなみに、着用するとこんなふうになります。3Dプリンティングならでは、ですね。
そして、充実のミュージアムショップへ!
うつろ舟どんぶり!!
今回、もう一つの目的は「うつろ舟どんぶり」を見ること。最初Twitterで写真で見たときは、面白いけど使い道が微妙だし、どうしようと思っていたのですが、実物を見たら、小ぶりで可愛くて、0.1秒で買うことを決意。
他にも、はやぶさ2のピアスとか、ワッペン、Tシャツ、いろいろありました! どんぶりは、
上蓋に例の文字がプリント。
ごはんを食べ終わると異国の美女が現れるようになっています。
日常的な使い道はあまりない感じですけど(笑)、将来、
わが家のぬいぐるみ「これなーにー」
この後、「ジブリの大博覧会」も行ったのですが、長くなるのでまた今度にします。
こうして、高いところから東京を眺めると、『シン・ゴジラ』が見たくなってきますね!
「うつろ舟の女」の続きです。
「うつろ舟の女」 琴嶺舎(滝沢宗伯) ※読みやすいように適宜ひらがなにしてあります
享和三年、癸亥(1803)の春二月廿二日の午(うま)の時刻、当時寄合席に在った小笠原越中守(高四千石)の知行所、常陸国はらやどりという浜に出来した事である。遥か沖の方に舟のごときものが見えたので、浦人達は舟を数多(あまた)漕ぎ出だしてこれを浜辺に曳きつけ、仔細に見聞に及んだ。
舟の形は香盒(こうごう)のように円く、直径三間余(約5.5メートル)、上部は硝子張りの障子を松脂で塗り固め、底は鉄(くろがね)の板金を段々筋のように張ってある。海の巌(いわ)に当っても打ち砕かれぬ為の用意であろう。硝子張ゆえ透き徹り内部は隠れなき有様にて、皆が立ち寄って覗いたところ、異様なる風体の夫人がいた。
その図、左のごとし。
眉と髪の毛は赤く、顔は桃色、白く長い仮髪(いれがみ、かもじ)が背に垂れている。その仮髪が獣の毛か、縒り糸か、知る者は無い。たがいに言語が通じぬため、何処(いずこ)の者かと問う術もない。
この蛮女は二尺(約60センチメートル)四方の筥(はこ)を持っていた。ひどく大切なものと思しく、暫しも離さず、人をも近づけようとしない。船中にあるものをかれこれと検分したところ、水が二升ばかり小瓶に入れてある[或る本は、二升を二斗とし、小瓶を小船とする。未だいずれが正しいのか知らない]。敷物が二枚ある。菓子のようなものもあり、また肉を練ったような食物もある。
女は、浦人達が集まって評議するさまを、長閑(のどか)に見つつ微笑むばかり。古老曰く「これは蛮国の王の女(むすめ)だろう。(中略。不倫が発覚して船に乗せられ漂流させられたのだろう、箱の中身はその密夫の首でもあろう、などと発言)」
浦人達は、これを官府へ聞え上げるとなると費用も並大抵では済まされぬ事ではあり、斯様なものを海に突き流した先例も無いわけではないと評議し、また女をもとのごとく船にのせ、沖へ曳き出して押し流したという事である。もし浦人達がいま少し人道を以て応対していれば、これほどの仕打には至らなかっただろうが、それは件の蛮女の不幸と申すものである。またその舟の中に、■■■■(例の文字)等の蛮字が多く見られたという事については、近頃浦賀の沖に停泊したイギリス船にも同様の蛮字のあったことが思い合わされる。(以下略)
(『江戸奇談会談集』(須永朝彦編訳、ちくま学芸文庫)より。p.166~)
享和三年、癸亥(1803)の春二月廿二日の午(うま)の時刻、当時寄合席に在った小笠原越中守(高四千石)の知行所、常陸国はらやどりという浜に出来した事である。遥か沖の方に舟のごときものが見えたので、浦人達は舟を数多(あまた)漕ぎ出だしてこれを浜辺に曳きつけ、仔細に見聞に及んだ。
舟の形は香盒(こうごう)のように円く、直径三間余(約5.5メートル)、上部は硝子張りの障子を松脂で塗り固め、底は鉄(くろがね)の板金を段々筋のように張ってある。海の巌(いわ)に当っても打ち砕かれぬ為の用意であろう。硝子張ゆえ透き徹り内部は隠れなき有様にて、皆が立ち寄って覗いたところ、異様なる風体の夫人がいた。
その図、左のごとし。
眉と髪の毛は赤く、顔は桃色、白く長い仮髪(いれがみ、かもじ)が背に垂れている。その仮髪が獣の毛か、縒り糸か、知る者は無い。たがいに言語が通じぬため、何処(いずこ)の者かと問う術もない。
この蛮女は二尺(約60センチメートル)四方の筥(はこ)を持っていた。ひどく大切なものと思しく、暫しも離さず、人をも近づけようとしない。船中にあるものをかれこれと検分したところ、水が二升ばかり小瓶に入れてある[或る本は、二升を二斗とし、小瓶を小船とする。未だいずれが正しいのか知らない]。敷物が二枚ある。菓子のようなものもあり、また肉を練ったような食物もある。
女は、浦人達が集まって評議するさまを、長閑(のどか)に見つつ微笑むばかり。古老曰く「これは蛮国の王の女(むすめ)だろう。(中略。不倫が発覚して船に乗せられ漂流させられたのだろう、箱の中身はその密夫の首でもあろう、などと発言)」
浦人達は、これを官府へ聞え上げるとなると費用も並大抵では済まされぬ事ではあり、斯様なものを海に突き流した先例も無いわけではないと評議し、また女をもとのごとく船にのせ、沖へ曳き出して押し流したという事である。もし浦人達がいま少し人道を以て応対していれば、これほどの仕打には至らなかっただろうが、それは件の蛮女の不幸と申すものである。またその舟の中に、■■■■(例の文字)等の蛮字が多く見られたという事については、近頃浦賀の沖に停泊したイギリス船にも同様の蛮字のあったことが思い合わされる。(以下略)
(『江戸奇談会談集』(須永朝彦編訳、ちくま学芸文庫)より。p.166~)
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